研究紹介

Research

研究テーマ

当研究室では、地震の物理や地震波動伝搬の解明を軸に、機械学習をはじめとするデータサイエンスの手法を多様な地震データへ応用する研究を行っています。 ここでは最近発表した論文から、代表的な研究成果を紹介します。

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Transformerエンコーダによる火山性地震の自動分類

Suzuki et al., Seismological Research Letters 97(2A), 1032–1047 DOI: 10.1785/0220240494

火山性地震には、通常の地震と似た波形を持つA型、低周波成分が卓越するB型などのタイプがあり、 その分類は火山活動の推移を評価するうえで重要な情報となります。 しかし従来の分類は人の目視判定に頼っており、主観が入りやすく多大な時間を要するという課題がありました。

本研究では、浅間山の多様な地震活動を対象に、Transformerエンコーダを用いた深層学習分類モデルを開発しました。 A型・B型・ノイズの3クラス分類でF1スコア0.930〜0.980を達成し、従来のCNN(畳み込みニューラルネットワーク)に基づく手法を上回る性能を示しました。

特徴的なのは、モデル内部のアテンション重み(注目度)を可視化することで、 「ブラックボックス」になりがちな深層学習モデルが波形のどこに注目して判断しているかを明らかにした点です。 その結果、モデルは専門家と同様に地震信号の重要な特徴に注目していることが確認できた一方、 学習データ中の曖昧なラベル付けが分類精度に影響することも分かり、データ品質の管理の重要性を示しました。 この枠組みは転移学習によって他の火山にも応用でき、火山災害評価の高度化につながると期待されます。

火山性地震波形へのアテンション重みの可視化例。地震信号の立ち上がり部分に高い注目度(明るい色)が集中している。
アテンション重み(AW)の可視化例。(a) 地震信号の立ち上がり部分に注目が集中している例(上: A型、下: B型)。 (b) 高い確信度で分類されたにもかかわらず注目が波形全体に分散した例。 こうした分析からモデルの判断根拠と学習データの品質の関係が見えてくる。 (Suzuki et al., Seismol. Res. Lett., Fig. 4より)

深層学習による箱根火山域の高性能フェーズピッカーの開発

Kim et al. (2023), Earth, Planets and Space 75:85 DOI: 10.1186/s40623-023-01840-5

火山地域では火山活動に伴って活発な群発地震が発生するため、その迅速な検出と解析は火山防災に欠かせません。 しかし地震波形からP波・S波の到達時刻を読み取る「検測」作業は最終的に人の判断に委ねられており、多大な時間と労力を要するため、リアルタイムでの詳細な把握は困難でした。

本研究では、箱根火山で1999年から2020年にかけて蓄積された約22万個のP波・S波読み取りデータを用いて、 深層学習(U-Net型アーキテクチャ)に基づくフェーズピッカー(地震波自動検測モデル)を構築しました。 一般的な地殻内地震で学習された既存の公開モデルと比較したところ、箱根のデータで学習・ファインチューニングしたモデルは地震検出率が大きく向上することが分かりました。

さらに、短い時間内に複数の地震が重なって発生すると小さな地震が見逃されやすいという課題に対し、 2つの地震を含む学習データを新たに作成してモデルを再学習させることで、従来は見逃されていたイベントの検出にも成功しました。 群発地震活動をリアルタイムで詳細に把握するための基盤となる成果です。

地震波形とP波・S波の検出確率の例。3成分の波形の下に、3つのモデルが出力したP波(青)・S波(ピンク)の検出確率が並ぶ。
フェーズピッキングの例。上3段が観測された3成分の地震波形、下3段が各モデルの出力したP波(青)・S波(ピンク)の検出確率。 単一の地震(左)だけでなく、同じ時間窓に2つの地震が含まれる場合(右)も正確に検出できている。 (Kim et al. 2023, Fig. 5より。CC BY 4.0)

研究の社会実装

こうした研究成果を地域の防災・減災につなげる取り組みとして、低コスト地震計測ユニット「SeisBox」による市民参加型観測ネットワークや、 動的避難誘導Webアプリ「ココイコ」の開発を進めています。

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